
©米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会
アニどう評価:
「私、気になります!」
廃部寸前の神山高校『古典部』を舞台に繰り広げられる【学園青春もの×ミステリー】の名作と言えば間違いなく『氷菓』です。
2017年9月時点でシリーズ累計220万部を突破した『米澤穂信』原作小説『古典部シリーズ』をアニメ化した作品なんです。
- 氷菓
- 愚者のエンドロール
- クドリャフカの順番
- 遠まわりする雛


青春時代を思い返しながら、考えて楽しい奥深いミステリーが楽しめるよ。
アニメ『氷菓』ってどんな作品?あらすじを紹介!
話の舞台はミステリーとは無縁そうにも感じられる、神山高校の古典部。
主人公『折木 奉太郎(ほうたろう)』は同校の卒業生である姉からのすすめで部員ゼロ、配分寸前の古典部に入部するところから始まります。

©米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会
奉太郎のモットーはめんどくさいことには関わらず、エネルギーは極力消費しない。つまり『省エネ主義』。
一人で静かに過ごせるならと、部室に入りますがそこには「私、気になります!」が口癖の好奇心旺盛の『千反田える(ちたんだ)』の姿が。

©米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会
さらには奉太郎の腐れ縁である『福部里志(さとし)』。福部に想いを寄せる『伊原 摩耶花(まやか)』をも巻き込んで古典部は復活を遂げます。
古典部の活動内容は『不明』。
千反田が日々学園内で【気になってしかたがない】ことに対して、奉太郎が巻き込まれる形で真相解明に挑むミステリーものとして話が展開していきます。

©米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会
ミステリーと言っても人が死ぬような大事件は起きません。
- 図書室の本の貸し出し履歴がおかしい。
- 古典部が作成した文集につけられたタイトルの意味は?
- 今かかっている職員室からの校内放送にはどのような意味が隠されているのか?
- 神社の倉庫に閉じ込められた。仲間だけに危機を伝えるには?
など。
ふつうに生活している分には絶対気になるようなことがない。

©米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会
知るのもめんどくさい内容を本気でロジカルに解明していきます。
ささいなことでも、気になることは解明しないと気が済まない千反田と、知るのもめんどくさいけど真相を解明できてしまう奉太郎の掛け合いは非常に面白く、見ていて飽きません。
回を進めるごとに省エネ主義であった奉太郎にも心の変化が起き始め、『千反田える』の存在がかけがえのないものに変わっていきます。



ミステリーだけど、日常系ジャンルとも言える不思議な作品だよね。

アニメ無料視聴サイトおすすめ
アニメを見るなら?
5分以内に視聴開始できるサイトを紹介しています。
アニメ『氷菓』のみどころ。どんなところが面白い??

©米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会

全22話を短編小説のようにあらすじを区切りながら展開していく。


アニメ『氷菓』を見てもつまらないかもと思う人は?

日常系だけど学生生活としての時間がただ淡々と進んでいる。


大人の事情で本来あった大筋のストーリーを完全に無視して、何度も春夏秋冬、同じ年齢を繰り返している。
もしくは進んでも進んでもゴールにはたどり着かず10年以上放送を続けるアニメ・・。
子どもたちが見るアニメはそれでいいんだろうけどね〜・・・。


往生際の悪いというか、面白かったストーリーだって全然おもしろくなくなる。

奉太郎たちの学園生活は一話、一話確実に時を進めていってるんだよ。






古典部のメンバー4名も強い志があって集まったわけじゃない『ただなんとなく』の集まりだし。

©米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会


かと言って甲子園を目指すわけでもない。
僕は原作小説をすべて読んだけど、そこは全く変わらないよ。


こんなことを見どころって言うのはあれだと思ったんだけどさ。見てみればわかるよ。この意味がね。
味わい深いんだよね、氷菓は。
登場人物と人間関係に青春あり!
氷菓のストーリーを彩るのは個性豊かな登場人物。
折木 奉太郎(おれき ほうたろう)

©米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会
「うかつだった・・・これ以上の拒絶や言い逃れはエネルギー効率が悪い・・・」
勉強にもスポーツにも後ろ向き。
やらなくてもいいことはやらない。やらないといけないことは手短に。
そんな灰色の高校生活を望む少年。
古典部に入った同期は姉のすすめ『部員がいなく廃部寸前だから入れ』というメッセージ。
天才的な推理力、洞察力、観察力を持っている少年。


あれの意味が分からないって人が多かったんじゃないかな。

©米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会
【奉太郎の心が完全に支配された=一目惚れ】を意味してる描写なんだよな。


他人に対する洞察力は凄まじいくせに、自分の気持ちになると『保留』しちゃうんだよね。

千反田える(ちたんだ える)

©米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会
「私、気になります!」
神山高校一年A組の女子生徒。
古典部に入った理由は「一身上の都合により」
神山市内で大きな力を持つ四名家のひとつ『千反田家』の令嬢。

©米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会
柔らかな物言いで誰にでも敬語を使うやまとなでしこ・・・なのですが、自身の興味があること、納得のいかないことがあるとブレーキが全く効かなくなるのが本性。
奉太郎の推理力を見込んである頼み事をします。
とにかくパーソナルスペースが狭く、目と鼻の先といった位置まで容赦なく顔を近づけてきます。
これでは奉太郎も気が気ではない・・・?

©米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会


笑顔をつくり社交辞令を言い、政治的な駆け引きをともなう日常を過ごしている。
それは想像もできないくらいストレスなんだろう。



学校でしかその一面をさらけ出すことはできない。ちょっと寂しい背景を持ったヒロインなんだよ。

福部里志(ふくべ さとし)

©米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会
「奉太郎の興味深い一面についての話さ。」
奉太郎をホームズと見るなら、里志はワトソン君。
自称データーベースと言うだけあり非常に多くの雑学を持っていて、学園内の事情通。
奉太郎とは真逆の性格でコミュニケーション能力が長けています。
千反田との出会いでずば抜けた推理力を見せる奉太郎の新しい一面が面白くてしょうがない。
はじめは、次々と謎を解決し、株を上げはじめた奉太郎を称賛するのだが・・・。

もちろん素直にそう思ってる感じなんだけどさ。




伊原 摩耶花(いばら まやか)

©米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会
「福ちゃん・・・?折木って頭良かったっけ・・・?」
漫画研究会と図書委員会を兼務しています。
里志のことが好きで彼の後を追って古典部にも入部することになります。
性格がきつく、奉太郎のことは良く思っていない部分があり彼に対してはきつい態度であたる。
話が進むにつれ、奉太郎への理解も深まり和解していきます。
簡単に言えば『ツンデレ』。
古典部の活動で言えば一歩引いた立ち位置になります。
彼女視点で独自のストーリー展開をすることが多く、里志に対する想いをどうぶつけていくかみどころになります。




ミステリーとしてのみどころは?
氷菓はミステリーものとして非常によく出来ています。
でも、僕たちが良く知るサスペンスものとは違うんですよね。
謎そのものは日常に転がっているありきたりなもの。
でも、深く考えてみるとちょっと気になってしまう?
ヒロイン『千反田える』はささいなことでも見逃さず首を突っ込んでいきます。
どのようなミステリーがあるのか、その一部を紹介します。
その1:千反田はなぜ部室に閉じ込められていたの?

©米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会
「私が来た時この部室の鍵は開いていました、でも折木さんが来た時は鍵はしまっていたと言います。不思議です!!」
奉太郎と千反田の出会いの日。初めての小さなミステリーがこれです。
奉太郎は職員室で部室の鍵を受け取り、鍵を開場して部屋へ入りました。
すると、そこにはすでに『千反田える』の姿が。
神山高校の扉は中からも外からも”鍵でしかロックできない”。
「気になります!私、なぜ閉じ込められたのでしょう?折木さんも一緒に考えてください!私、気になります・・・!」
千反田が部室に入ったのは折木がくる約3分前。
部室の鍵持っていたのは折木。
ということは・・・?

その2:ある本の貸出履歴

©米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会
「私が登板で金曜放課後図書室にくると毎回同じ本が返却されているの。」
伊原 摩耶花(まやか)初登場の回。彼女を驚かせたミステリーがこれです。
図書室で貸出されている面白みのない普通の学校誌。
普通であれば誰も見向きもしないような本の貸出履歴がおかしいというお話。
毎週金曜日に貸し出され、その日のうちに返却されている。
時間も曜日も一緒なのに、借りる人はいつも違う人。
5人とも昼休みに借りて放課後に返す。5週連続。
「ちょっと考えてみましょうよ!折木さん!」
これを偶然だと言い張るのは簡単だけど、それでは千反田は納得しない。

死んだ叔父が千反田に伝えた言葉とは?

©米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会
「私がセキタニジュンという叔父から何を聞いたのか思い出させて欲しいんです。」
ある日曜日の朝。千反田に電話で呼び出された奉太郎は意味が分からないお願いをされます。
千反田の叔父は7年前にインドへ行ったきり行方不明。
彼女の叔父は奉太郎達のOBにあたります。45年前、神山高校の古典部だったのです。
千反田が幼稚園の頃、自宅で見つけた古典部の文集『氷菓』を手に”何か”を叔父に訪ねました。
普段はどんな質問にもにこやかに答えてくれる叔父でしたが、その時だけ妙に返事を嫌がったとのこと。
ダダをこねてようやく聞き出した答えを聞いた千反田は大泣してしまいました。
答えが恐ろしかった?悲しかったのか?まったく内容を覚えていません。
そしてなぜ叔父は答えをしぶったのか?なぜ泣いた千反田をあやしてくれなかったのか?
その答えは高校生になった今も千反田の心残りとなり「気になって仕方がありません。」
千反田が古典部に入った一身上の都合とはこの謎を知るのが理由。

©米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会
「折木さんなら私を答えまで導けるはずです!」
「気が進まん!!」
7年間生死が不明な人物は法律上死亡したものと扱えます。
近々葬儀も行われるらしく、千反田は叔父の伝えてくれたことを胸に秘めて葬儀に望みたいという。
この謎解きは作中の中でも長編のミステリーです。
古典部の文集のタイトルは『氷菓』。
タイトルの意味と、疾走した叔父の謎。
奉太郎の解き明かした真実は彼らの想像をはるかに超えるものでした。

アニメ氷菓と原作小説『古典部シリーズ』の関係と違いについて


古典部シリーズ
冒頭に少し触れましたが、アニメ『氷菓』は古典部シリーズ(著:米沢穂信)と呼ばれる小説が原作になっています。
2018年8月現在では全6巻。角川文庫より販売されています。





世界観やキャラクター像、ストーリーの細かなところまでね。


むしろ原作は日本語表現が難しかったりするから、アニメを見ると「そういうことか!」って発見があったりするくらいさ。




アニメ版氷菓は小説のどの部分になるの?
アニメ版と小説の位置関係を解説しておきます。
もっと氷菓の世界に浸かりたい!という人はとことん奉太郎、千反田、里志、摩耶花の4人に付き合ってやりましょう!
氷菓
アニメ1話Aパート:伝統ある古典部の再生
アニメ2話:名誉ある古典部の活動
アニメ3話:事情ある古典部の末裔
アニメ4話:栄光ある古典部の昔日
アニメ5話:歴史ある古典部の真実

作品のタイトルとなった小説だよ。

愚者のエンドロール
アニメ8話:試写会に行こう
アニメ9話:古丘廃村殺人事件
アニメ10話:万人の死角
アニメ11話:愚者のエンドロール
むしろそれがミステリー小説の大原則なんだと。


真面目に奉太郎より先に謎を解きたいと思うなら、1ページ目についてる見取り図をコピーして片手に持ちながら読み進むことをおすすめするよ。

グドリャフカの順番
アニメ12話:限り無く積まれた例のあれ
アニメ13話:夕べには骸に
アニメ14話:ワイルド・ファイア
アニメ15話:十文字事件
アニメ16話:最後の標的
アニメ17話:グドリャフカの順番



遠まわりする雛
アニメ1話Bパート:伝統ある古典部の再生(音楽室の怪談・秘密倶楽部の勧誘メモ)
アニメ6話:大罪を犯す
アニメ7話:正体見たり
アニメ19話:心当たりのある者は
アニメ20話:あきましておめでとう
アニメ21話:手作りチョコレート事件
アニメ22話:遠まわりする雛

アニメ版は時系列に語られるけど、小説だとこの第4巻に集約されるから、一瞬「あれ!?」ってなるよw


でも、もっと氷菓を見たい。神山高校の青春にどっぷり浸かりたいなら・・・ここから先の小説を買えばいいのさ。
ふたりの距離の概算
ここからの話は奉太郎たちが高校2年生に進級します。
古典部にも新入生を迎えようと奮闘する4人の前に新入生『大日向友子(おおひなたともこ)』が入部希望を出してきます。
明るく元気でとても印象の良い子なのですが、仮入部期間の最後、突如「入部しない」と告げて古典部を去ってしまうのです。
どうもその原因は『千反田』にあるようなのですが・・・。
納得できない奉太郎はその真相を突き止めるべく動き出します。
いまさら翼と言われても
アニメ18話:連峰は晴れているか
こちらも短編集です。
アニメ版『氷菓』から後日談としてつながる話が多いので絶対に読むことをお勧めします。
『愚者のエンドロール』から続く後日談。
『遠まわりする雛』から続く後日談。
この2つだけでも見ものです。
さらに奉太郎と里志の人格を形成しているコアな部分に触れる話や、摩耶花がふだんから奉太郎に冷たく当たる理由など、アニメ氷菓を見て気になっている部分が全て解決します。
アノ頃を思い出しながらゆったりと楽しめるミステリー『氷菓』

©米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会
アニメ『氷菓』。
人が死ぬだけの話がミステリーではないことを突きつけてくれる名作です。
あらすじに派手さはなくてもここまでどっぷりハマらせてくれたことに僕は感謝の言葉を送りたいと思いました。



氷菓だけにな。

